最近、「炎上」という言葉がインターネット界隈でよく使われるようになりましたよね。日本でインターネットを利用している方は、日々様々な人たちが炎上している様子を見ていることかと思います。

しかし、このような「炎上」は日本特有のものではありません。インターネットが普及している国では、どこでもこのようなことが起きています。そこでここでは中国に焦点を当てて、「人肉捜索(人肉検索)」と呼ばれる、中国のネット民が炎上後に個人情報を特定する活動をご紹介します。

人肉捜索とは

人肉捜索(検索)とは、インターネット上で人海戦術を使い、匿名で報道された犯罪行為、ネット上で大衆の怒りを買った動画の当事者たちなどを特定することです。

氏名、年齢、住所、職業、メールアドレス、家族構成などの個人情報が、容疑者だけでなくその家族まで調べられ、ネット上にさらされるケースもあります。結果、当事者は職や地位を失うことが多いようです。

人肉捜索の目的とそれによる弊害

人肉捜索の目的とは?

人肉捜索は、不正や非人道的行為をあばくことを目的として始まりました。

人肉捜索が非人道的行為の犯人を暴いた最も古い事件とされているのが、2006年に中国で起きた「猫虐待事件」です。中国の動画サイト「Map」に、中年女性が猫をハイヒールで踏みつけて殺す匿名動画が投稿され、中国のネット民の激しい怒りを買いました。

そして後に「警察を上回るほどの操作能力」とも評価された人肉捜索が行われ、猫を殺した女性は黒龍江省夢北県にある病院の看護師であることが判明し、彼女の住所、電子メールのアドレス、電話番号、身分証番号などの個人データがネットで暴露されました。

この結果、彼女と、問題となった動画の撮影を手伝ったとされるテレビ局職員の男は、職場を解雇されました。

このように、一般の人も犯罪者や悪人を捜査したい、制裁したいという気持ちから始まったのが、人肉捜索です。

人肉捜索の弊害

人肉捜索が進むなかで、「プライバシーの侵害」という悪い一面も目立つようになります。

中国には「中国中央テレビ(CCTV)」という有名なテレビ局がありますが、CCTVにやらせ疑惑が持ち上がったことがあり、その疑惑の番組に出ていた少女の個人情報が人肉捜索でさらけ出される、という事件がありました。

ネットのわいせつな情報に関する問題を取り上げた番組で、少女がインタビューに答える、という内容でした。少女は「ネットで資料を調べようと思ったが、突然開いたページがいやらしく暴力的だったので急いで閉じた」と語りましたが、この発言が「やらせではないのか」と疑われ、人肉捜索が行われたのです。

彼女の生年月日、学校名、成績までがネットで明かされ、ついには彼女をからかう悪質なパロディー画像も登場しました。ネット民の行き過ぎた行動に、彼女の父親とされる人物が書いたとされるプライバシーの暴露を厳しく批判する手紙も公開されました。

結果として、本当にやらせだったのかはわかっていません。もしもやらせではなかったら、なんの罪もない人の個人情報がさらされたということ。間違いで個人情報がさらされるなんて、たまったものではありません。

ついに「人肉捜索」に法的責任が!?

人肉捜索には不正や非人道的行為を暴く一面もありますが、行き過ぎるとプライバシーの侵害になります。特にテレビ番組に出演した少女の例では、幼い少女の個人情報がさらされたとあって、賛否が分かれるところでしょう。

中国では以前から審議の対象になっていた人肉捜索の問題でしたが、2014年の10月に最高裁判所がついに規定を設けました。例えネットで炎上した案件においても、その調査によるプライバシーの侵害は犯罪となる、という内容になっています。

日本の例

中国だけでなく、日本でも「人肉捜索」は行われています。

しまむら土下座事件

衣料品チェーン「ファッションセンターしまむら」で店員に言いがかりを付け、土下座写真をツイッターに投稿した40代の女性が強要罪で逮捕された、という悪質な事件がありました。

この事件はマスコミでも実名が公表されたのですが、マスコミが公表する以前からネットでは当事者の氏名・住所・生年月日・ツイッター以外のSNSアカウント名・マイカーの車種とナンバー・家族構成、その他ありとあらゆる情報がさらされ、いわゆる「お祭り状態」になっていたようです。

捜索の手口はプロも目を見張るほど、しかし弊害も

上記のしまむら土下座事件では、当事者の個人情報だけでなく、当事者の実名報道される直前の写真までネットにさらされました。女性が車に乗り込む場面で、車種、ナンバープレートも写りこんだ、証拠写真としてはかなりクオリティーの高い写真だったそうです。

これが本当に犯人だったからそこまで批判もされなかったものの、SNSやネット上の情報には、デマもかなり含まれています。不正確な情報が拡散され、全く無関係な人が被害者になる可能性もあるのです。

良くも悪くも逃げられない

ネット社会では匿名性などあってなきものだということがよく分かりますね。1度目をつけられたら逃げられません。

それがいい場合も悪い場合もあるので、デマの拡散などによる被害を防ぐためには、メディアリテラシーを個人が身に付けるしかないのかもしれませんね。

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(image by ぱくたそ)