2016年9月14日から16日までの3日間、茨城県のつくば国際会議場にて日本バーチャルリアリティ学会が主催する「第21回日本バーチャルリアリティ学会大会」が開催された。

こちらのイベントではバーチャルリアリティに関する研究成果の発表や企業によるVR関連製品の展示、研究者による実演展示などが行われたのである。

また、「第24回国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト」の予選大会も併せて開催されたこともあったからか、学生が斬新な視点で創り出したVR作品も数多く出展されていた。今回は学生が開発したVR作品を中心に、イベントの様子をレポートする!

五感を全て奪うVR「五感シアター」がスゴい!!

数多いVR作品を体験させていただいたが、その中でも特に完成度の高さが際立っていたのが首都大学東京大学院 池井研究室の「五感シアター」だ。

こちらではカナダのトロントを旅行するバーチャル体験ができるのだが、視覚と聴覚だけではなく五感全てに訴えかけてくるような体験ができるのである。

そのため機械を装着すると視覚と聴覚を奪われた状態で、さらに全身が固定され身動きがとれない状態になるのである。正直、作品の動作が始まるまではかなり怖い。これから極刑に処される極悪人になった気分である。

「五感シアター」の上映が始まると、一瞬にしてトロントまでワープしたような気分を味わえた。青果市場を歩くシーンではアロマオイルとサーキュレーターを使用してフルーツの香りをほんのりと漂わせ、ナイアガラの滝のシーンでは強風や水しぶきの冷たさ、水滴が体に降り注ぐ感触まで全て映像と音声と連動して伝わってくるのだ。これはすごい!!

とはいえ、この手のVRで肝となるのはやはり映像と音声なのだが、その2点においても一切の妥協がない。制作者たちが自らトロントにまで出向いて撮影を行い、リアルに五感で体験したことを「五感シアター」に落とし込んでいるのである。

体験した前日は機械がうまく動かないトラブルもあったそうだが、今回は完璧なトロント旅行体験を堪能させていただいた。ぜひ他の地域も体験してみたいものである。

うつ伏せでのVR体験は負担が減るのか?

VRの表現方法だけでなく、「VRの体験手法」について疑問を投げかける展示もあり、大変興味深かった。電気通信大学のブースでは、うつ伏せ姿勢でのVR体験手法を提案する展示を行っていた。

机の上にうつ伏せになり、バスケットボールをドリブルする体験をさせていただく。こ……これは楽なのか……? そもそもうつ伏せでバスケットボールをドリブルなんて当然したことがない。どうにも難しいのである。だが研究の成果によると、腕の負担はかなり改善されるのだとか。

新しい物事は既存の常識を破壊することで生まれてくるものである。数年後、もしかすると我々は当たり前のようにうつ伏せでVR機器を操作しているのかもしれない。

ゲーム以外のVR! 津波時の自動車運転を体験

プレイステーションVRの発売を間近に控え、VRといえばゲームというイメージが強くなりがちであるが、やはりゲーム以外での活用にも期待をしたいところ。愛知工科大学 板宮研究室ではVRを利用した津波発生時の自動車運転をVR体験するシミュレーターを開発していた。

序盤は何も不自由なく自動車を操作できているのだが、津波が発生して道路に水が流れ込み始めると、ハンドルがまったく効かなくなってしまう。この時点ですでにドアは開けられなくなってしまい、窓ガラスを割って外に脱出するしかない。

今回のシミュレーターでは操作ができなくなる部分までの体験だが、そのあたりまで体験できるようになれば、体験者に強く危機感を植え付けられるだろう。リアルな災害体験はゲーム以外のVR活用法として、かなり有効なものになり得るだろう。

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人間に食べられて排泄されるまでをVR体験

そして最後は豊橋技術科学大学の「2016年 食物の旅」だ。人間に食べられ、ほふく前進体内を通過し、最終的には便器に排泄されるという、いかにも大学生らしい発想のVR作品である。

体験をしている様子はなんともシュールな絵面となり、映像にもおバカな要素がしっかりと散りばめられているが、生物の体内に侵入するリアルな体験ができるというのはなかなか面白い。ブラッシュアップすれば教育にも使用することができそうだ。

企業のVR製品にはない“粗さ”に感じる無限の可能性

会場には他にも学生による「作品」と、企業による「製品」がそれぞれ数多く展示されていた。完成度の高さと安定感は企業のVR製品が別格という感じであったが、学生のVR作品には、商品化をまったく考えていない先鋭的なものが多いのだ。

ダイヤの原石が散らばっているのである。ここから今までに誰も思いつかなかったVRの活用方法が生まれてきそうなエネルギーが感じられた。

また、中には企業製品に匹敵するクオリティを持った学生作品も多く見受けられた。おそらくVRの未来は、今回のイベントに参加していた学生たちが中心となって創り上げていくのだろう。革新的な想像をできる若者がいる限り、これからのVRへの期待は膨らみ続けていくのである。

(image by 筆者)