1997年に第1回が開催された文化庁メディア芸術祭。今年でついにその歴史は20年を迎え、20周年を記念した企画展が開催された(10月15日〜11月6日)。今回は、このイベントを振り返ってご紹介したいと思う。

アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を表彰し続けてきた文化庁メディア芸術祭の歴史は、まさにメディアの変革の歴史そのもの。ここ20年で目まぐるしく変化を遂げたメディア表現のすべてが凝縮された展示だったといえるだろう。

さまざまなジャンルのメディア芸術を展示

「文化庁メディア芸術祭20周年企画展 −変える力−」は都内5ヶ所の会場にて展示や上映が行われ、各会場ともに賑わいを見せていた。こちらでは、過去の受賞作品を通じて20年の歩みに触れられる展示が行われた「アーツ千代田3331」での様子をレポートする。

広々としたスペースを利用した開放感のある展示は、ひとつひとつの作品に没入して鑑賞するには最高の環境だ。

展示されている作品がすべて最新の展示というわけではない。当然ながら20年前の作品も展示されている。しかし、これらの作品はすべて当時は最新のメディア作品であり、非常にセンセーショナルな表現だったのである。

2016年現在に鑑賞するとどこか古臭く感じてしまうようなものも、すべてが現在のメディア作品の礎となっているのだろう。そしてさらに20年後には、今の「最先端」がレトロな物へと化していくのだ。そうしてメディア表現の歴史が積み重ねられてきたということが強く感じられる展示となっていた。

20年間の中でも比較的変化を感じられないメディア作品といえば漫画になるだろう。会場には荒木登呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」も展示されていたが、ジョジョが発表されたのは1987年。20年どころではなく30年同じ作品が描かれ続けているのだ。

しかし、漫画を制作する環境は大きく変化を遂げた。ペンにインクをつけて執筆するアナログ方式で原稿を描く作家はほぼ絶滅し、今や完全にデジタル制作が主流となった。漫画の電子書籍やネットでの配信もすっかり定着し、漫画を取り巻く環境も気づかないところで大きく変化しているのである。

そして20年の歴史の中でも、3Dプリンタの出現はここ数年のの大きなトピックスとなるだろう。その精度はめざましく上がり、3Dプリンタで出力したパーツを使用して義手を制作し、コストを大幅に削減することにも成功したのである。これから先もまだまだ3Dプリンタの発展には期待をしたい。

メディアの歴史を最も感じられる「ゲーム」の変化

このように、メイン会場であるアーツ千代田3331にはさまざまなジャンルのメディア表現による展示が並べられていたが、その中でも最もメディアの変化を感じられるのは間違いなく「ゲーム」だろう。ゲームの歴史こそがメディア表現の変化の歴史といっても過言ではないのである。

文化庁メディア芸術祭が産声を上げた1997年といえば、まだプレイステーション2もゲームボーイアドバンスも発売されていない時代である。それから20年の間にNintendo DSやプレイステーションVR、位置情報を使用したスマホゲームなど、20年前の人たちには想像もできないようなゲーム表現が誕生したのだ。

ゲームの展示の中でもひときわ目立っていたのは「Ingress」である。2014年にエンターテイメント部門で大賞を受賞したこのゲームは、GPSと世界地図を道しるべにして、現実空間と仮想空間をリンクさせた革新的な作品であった。この「Ingress」で登録されたランドマークなどのデータが「ポケモンGO」で活用されたというのはあまりに有名だ。

第2回文化庁メディア芸術祭でデジタルアート(インタラクティブ)部門の大賞に輝いたのは、Nintendo 64で発売された人気アクションRPGの「ゼルダの伝説 時のオカリナ」だ。3Dゲームの先駆け的存在であり、ゼルダの世界観をしっかり残しながらもゲームの可能性を大きく広げた、今考えても大賞にふさわしい一本なのである。

「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の成功がなければ、今では当たり前となった3Dゲームが普及するまでもう少し時間がかかってしまったかもしれない。

革新的なゲームといえば「Wii」の存在も忘れてはならない。ゲームはコントローラーのボタンで操作をするものという概念を壊し、斬新なアクションでゲームを操作するという新しい感覚を提供してくれた。特に「Wii Sports」などのゲームは紛れもないバーチャル体験であり、プレイステーションVRに限りなく近い存在であったことは間違いないだろう。

さらなる未来のゲームに期待しよう!

今年はプレステVRをはじめ、VRを取り入れたさまざまなゲームが発表され、まさに「VR元年」と呼ばれるにふさわしい1年となった。数年前には想像もできなかったジャンルのゲームが世にあふれ始めているのである。

ゲームの世界におけるメディア表現の変化スピードは著しく速い。さらに数年後には、もしかするとまだ誰も想像もできないようなゲーム表現が生まれているかもしれない。まさに、メディア表現の変化の歴史は、ゲームの歴史そのものなのである。

(image by 筆者)