同人&インディーゲームのオンリーイベント「デジゲー博」が11月13日、秋葉原UDX2階 アキバ・スクエアにて行われた。2016年はVR元年とあって数々のVRゲームが展示されていたが、もうVRは既に成熟期を迎えつつあるらしい。そう思わせる程、筆者の心を鷲掴みにして離さなかった魅力的なゲームを発見したのでここに紹介したい。

刺身にたんぽぽを乗せるゲーム。

その名も、アクションゲーム「VR刺身たんぽぽ」!ネットスラングの一種である「刺身にタンポポを添えるだけの簡単な仕事」を実際に体験できるゲームである。制作したのはフレームシンセシス。

VRで車庫入れや縦列駐車の練習ができる「3D駐車シミュレーター」や、VR Award Japan 2015で9位にランクインした川下りアクションゲーム「オーバーストリーム」など、数々のVRゲーム作品を世に送り出しているサークルだ。

未発売のコントローラーを使う。

このゲームで使うコントローラーは「Oculus Touch」。これはOculus社が12月に米国で発売予定のもので、今回の展示では開発者用サンプルを使用しているという。今までのコントローラーとの大きな違いは、まさに左右のコントローラー同士が"タッチ"できること。

両手を使って、ものを掴んだり摘まんだりする動作が可能になったのだ。この動きは、たんぽぽを刺身に乗せる時にも大いに役立てることができるようだ。

刺身が流れてくる。

ゲームがスタートすると、コンベアから刺身がどんどん流れてくる。皿1つにつき1個ずつ黄色いたんぽぽを乗せていくのだが、簡単かと思いきや意外とこれが難しい。上手く乗せないとたんぽぽは皿から零れてしまうし、1つ乗せるタイミングを間違うとその後連続でやってくる刺身がすべておじゃんになってしまう。

両手を使う暇がない。

さらに乗せるたんぽぽは4ヵ所に分かれてスタンバイされているため、どこからたんぽぽを持ち上げるのか、一瞬迷いが生じただけでもタイミングがズレる。ひたすら無心にまずは一ヵ所のたんぽぽを集中的に乗せ続け、無くなったら次のスタンバイ場所に手を伸ばすのが賢いやり方だと私は悟った。

前半のたんぽぽ乗せは順調だった。ほぼノーミスで右手側手前のたんぽぽが無くなり、左手側手前のたんぽぽもなくなった。しかし、奥に置かれたたんぽぽはアクションも大げさになるため取りづらくミスが増えてきた。刺身に置かれなかったたんぽぽが点々とコンベアに落ちていく。物悲しい。

せっかくOculus Touchを使っているので、両手で乗せるなど応用的なコントローラーの使い方をしてみたかったのだが、この時の筆者にそんな余裕はなかった。つい簡単に扱える利き手のコントローラーばかり使用してしまう。

写真的にも動きが生まれないので、この選択はライター失格かもしれない。しかし、この時の私はそんなことより一つでも多くたんぽぽを刺身に乗せたかった。「流れてくるすべての刺身にたんぽぽを……!」その一心で、私はひたすら利き手のOculus Touchを動かし続けた。

意外と高得点。

結果は「賃金33円」。つまり33個のたんぽぽを置いたということだ。今までの最高得点は「賃金38円」ほどで、平均では「賃金28円」くらいとのこと。

どうやらわりと高得点を出せたようだ。立派なことをやり遂げたような気がして、清々しい気持ちになった。この後に行うはずの原稿書きもはかどりそうな予感さえ生まれ、私はブースを後にした。

無心になれる良ゲーム

「VR刺身たんぽぽ」は、ただ無心に刺身にたんぽぽを乗せ続けるだけのゲームだ。単調だからこその難しさもある。だからこそ、終えた後は達成感を強く感じることができる。

自分の普段している仕事がルーチン化し始めたり、価値を見出せなくなった時は、ぜひこのゲームで遊んでみて欲しい。その仕事に対し、少し新鮮な気持ちを取り戻すことができるかもしれないから……。

直球を覚えてないのに変化球を覚えようとする。野球を始めたばかりの少年にありがちの罠だ。この「VR刺身たんぽぽ」が変化球かどうかは議論の分かれるところだろう。もしかすると、人生をシュミレートするという意味において「VR刺身たんぽぽ」はVRの本質を突いているのかもしれない。新しいエンターテインメントの扉は開いたばかりなのに、すでにその答を私達は得たのだろうか。それはもう少したんぽぽを乗せてみないと判らない。

(image by 筆者)